「できることから少しずつ」サステナブルなスイスのEVシフトをタドる!
読みもの|11.24 Wed

険しいゼロエミッションへの道

2050カーボンニュートラルに向け、世界はモビリティのゼロエミッション化に取り組んでいます。TADORiの読者の皆さんならご存じかと思いますが、世界各国で内燃機関エンジンを搭載したモビリティの販売を2030~2040年までに禁止するというものです。つまり、ほとんどの自動車やバイクをあと14年でEV(電気自動車)またはFCV(燃料電池車)にしようというのです。水素エンジンはコストやインフラの点から早期の普及は現実的ではないため、おそらく目標達成のためにはEV化を進めることになるでしょう。

いま日本にどのくらいEVが普及しているのかというと2020年の新車販売台数は約1万5000台で、乗用車全体の約0.6% ※です。アメリカは富裕層のテスラ人気によって意外にも約1.8%と高く、EVに積極的なヨーロッパはEUとイギリスを合わせて約5.6%※となっています。この数字の通り、どの国もモビリティのゼロエミッション化というゴールは遥か先なのです。

では、EVの販売が進まない理由はどこにあるのでしょうか。それはほぼ以下の通りです。①航続距離が短いこと ②充電時間が長くインフラが整っていないこと ③物流向けEV車の開発が進んでいないこと ④EV乗用車のバリエーションが少ないこと ⑤価格が高いことです。これらが改善されていくにはまだまだ時間がかかるでしょう。であれば、現在の条件のなかでEV化できるものから変えていくしかありません。

※一般社団法人 日本自動車販売協会連合会発表 2020年(1〜12月)燃料別販売台数(乗用車)1および東京電力エナジーパートナー㈱WebマガジンEV DAYS記事より引用

スイスからやって来た、郵便屋さんのEV

今回ご紹介するのはスイス・ポスト(スイス国営郵便事業会社)が配達に採用している三輪EVです。このコンパクトなスイス製EVは、普及率を少しでも上げていくためのひとつのアイデアかもしれません。

写真はKYBURZ 2ndLife DXSというモデルで、充電式のバッテリーを搭載し後輪をモーターで駆動します。見た目は小型バイクのようですが日本の法規ではクルマと同じ扱い※になります。開発・製造したのは1991年創業のKYBURZ Switzerland AG(キーバス社)という実績豊富なスイスのEVメーカー。航続距離はフル充電で最長115km。日本での価格は946,000円~1,001,000(税込)に設定されています。正規代理店である(株)イベンタス社(神奈川県藤沢市)が輸入し、ことしの4月から日本で一般向けの販売が開始されました。

スイス・ポストは早くから郵便配達用の車両のEV化を進めていて、稼働開始は10年以上も前。以来、この三輪EVが郵便配達のラストワンマイル、つまりお客様に郵便物を届ける最後の短区間を担ってきたのです。その実績が評価されて、いまではEU各国をはじめオーストラリアやニュージーランドの郵便配達車両としても活躍しています。

ラストワンマイルデリバリーはEV。スイスではごく当たり前の風景。

乗用車やトラックをすぐにEV化することが難しければ、できるところからEV化を進めていく。それは人々のEVに対する認知や理解を深め、普及の手助けにもなる。スイス・ポストのこの柔軟で合理的な発想は、日本でも有効なのではないでしょうか。ホンダも2020年から日本郵便の都内の配達車両に小型EVバイクの納入を開始。将来的には各郵便局に充電ステーションを設置する構想もあるといいます。

道路運送車両法上は側車付自動二輪自動車のうちの側車付軽二輪に相当。運転には普通自動車免許(AT限定含む)が必要。

 サスティナブルなリビルドEV

実は、KYBURZ 2ndLife DXS はスイス・ポストで一定期間使用された車両で、セカンドライフという名称が示す通りKYBURZ社が入念にメンテナンスを施し、新車同様のコンディションに整えたリビルド製品です。

入念なメンテナンスで新車同様に生まれ変わるKYBURZ 2ndLife DXS。

日本人の感覚だと中古車という印象を受けますが 、これからの“モビリティはサスティナブルであるべき”というKYBURZのコンセプトの一環で、 すべてのモデルがシンプルに設計され、多くのコストや手間をかけずに何度でも再生利用できるよう考えられているのです。またEVのネックである価格を抑えることでEVにシフトしやすくするという狙いもあるようです。

主要パーツであるバッテリーには再生に適したリチウムイオン電池を採用。さらにブレーキシステムにはスロットルオフだけで減速・停止が可能なモーター回生式を採用し、パッドやブレーキオイルなど消耗部品の交換を不要にするなど、メンテナンスにかかる負担も極力抑える仕様になっています。

さらにもうひとつ。カーシェアリングの発祥国といわれるスイスでは、この3輪EVもさまざまな業種間でシェアされているそうです。たとえば早朝は新聞配達、昼間は郵便配達、夜間は宅配便というように業者間でEVをシェアするサスティナブルなしくみが根付いているのです。高価格がネックのEVだからこそ、このような方法を日本でもぜひ取り入れてほしいものです。

誰でも安心して乗れるイージードライブEV

試乗をした印象はEVらしく加速がとてもスムーズ。とくに感心したのは豊かなトルクで、かなりの坂道でも静かに力強く駆け上がっていきます。回生ブレーキの減速感に少し慣れが必要ですが、転倒のおそれがほとんどない三輪の安定感はやはり絶大で、乗り降りや各種の操作を含めてほとんどの方が不安なくドライブできると感じました。聞けばKYBURZが生まれたそもそものきっかけが高齢者のために開発されたモビリティだったということで扱いやすさのわけが理解できました。運転するにはバイクの免許ではなく、普通自動車免許(AT限定免許含む)が必要になります。

クルマより扱いやすく、バイクより実用的

KYBURZ 2ndLife DXS は日常の足として小型バイクのように気軽に乗ることもできますが、先に書いた通り、もともとスイス・ポストの集配車なのでモノを安全かつスムーズに運ぶための機能に長けています。ノーマルの状態で120kgの荷物が運べ、専用トレーラーを連結すればさらに積載量を150kgアップさせることも可能です。

クルマよりもコンパクトで、バイクよりも実用的、しかも安心して乗れて環境にやさしい。では、このスイス生まれのEVが日本でどんな風に活躍するのか。試乗をしていてまず頭に浮かんだのは、狭い路地や坂の多い街、またはクルマの往来が困難な山間地。とくにガソリンスタンドの少ない地域では家庭用電源で充電できるEVは、まさにうってつけのモビリティという印象を受けました。

山間地の多いスイスで大活躍するKYBURZの3輪EV。

EVシフトを加速させる、走る楽しさ

今回取り上げたのはスイス・ポストで活躍したDXSという“働くEV”でしたが、本国のKYBURZでは乗り物好きの心をつかむエモーショナルなモデルも数多くラインナップ※しています。eRodと呼ばれる4輪モデルは、軽いボディにハイパワーのモーターを搭載した、まさにスポーツカーそのもの。その他にもカスタムバイク風のモデルや屋根付きの4輪モデルなど、遊び心あふれる多彩なモデルを販売しています。ビジネスや環境だけではなく、走る楽しさも加わることで、その可能性はいっそう広がり、EVシフトを後押ししていくに違いありません。こんなモデルで日本の道を走れる日が待ち遠しいですね。

※写真のモデルはすべて日本未発売です。

▼商品に関するお問い合わせ先▼
KYBURZ正規代理店
株式会社イベンタス
〒247-0074 神奈川県鎌倉市城廻123-1
PHONE:046-745-1231
Mail:info@ev-enters.com

#持続可能な社会 #読みもの
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記事を作った人たち

タドリスト
淀哲治
鎌倉在住。田舎暮らしを夢見る、料理好き、旅好きのコピーライター。広告代理店等でクルマや時計の広告制作に携わり、現在はフリーランス。広告屋なのに広告のない街並みやNHK-BSが大好きな仕事熱心じゃないオジサン。