【第2回】ムハマド・ユヌス × 大石英司|世界を治す具体策
冒頭から再生可能エネルギーの重要性、みんでんがブロックチェーン技術を持っているからこその可能性、そして今、誰もがさすがに感じている、地球が晒されている気候”危機”を抑止する方法について語ってくださった。
印象的だったのは、世界を震撼させているCOVID-19を、これ以上ないエネルギーシフトの機会と、しごく前向きに捉えてらっしゃったこと。その感覚で、いち早く行動に移している例として挙げられたのは、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんに代表される世界の若者たちだった。
ユヌスさんの視線は常に、社会的弱者に向けられている。しかしだからといってただ無条件に救済するのではない。
大切にされているのはあくまでサステナブルに、それぞれが自立し、自らの力で道を切り拓いていく手助けをするという姿勢。そしてその根幹にも、エネルギーがある。
Photo: Yunus Centre/Nasir Ali Mamun
設置コストは、バングラデシュに広く普及しているケロシン(灯油)ランプに使っているお金と同額しかかからないので、実質無料です。もし発電量を増やしたい場合は追加料金を払ってパネルを増やせました。
最初は25ワットからはじめて、それを50ワット、75ワットと増やせて、100ワットもあればこの国の市民にとっては十分過ぎるほどの電気となります。その結果として、今もバングラデシュにはたくさんのソーラーパネルがあります。
現在の課題は、パネルの製造にあります。当時から現在に至るまで中国や日本から輸入していましたが、もし私たちが自分でパネルをつくれるようになれば、当然価格は下がります。合わせて送電システムのネットワークもつくれるようになるので、そうなれば自分でつくった電気を売れるようにもなります。余剰の電気を近隣に融通すること、販売することができれば、無駄がなくなります。
去る7月末のある日、コロナ騒動がなければバングラデシュで会っていたお2人の、ZOOM会談が実現したのだった
やり方として思いつくのは、新しい構造をつくることです。
私たちは過去に、スポーツに関連する事業をソーシャルビジネスにする「ユヌス・スポーツ・ハブ」や、似たようなコンセプトで「ユヌス・環境・ハブ」というものも設立しました。もちろん新たに「エネルギー・ハブ」をつくることもできます。
するとそこに専属のスタッフがついて働けるようになり、貧困家庭の救済から始めて、再生可能エネルギーを国全体に広げていく下地ができるでしょう。
私たちはまだ、化石燃料からの完全なる脱却が実現できていません。ケロシンオイルからの切り替えは進み、それも厳密には化石燃料からの転換と言えますが、次のステップであるエネルギーの切り替えはまだ道半ばです。そしてその転換を実現すべく、ソーラーだけでなく水力、風力など、利用できる自然資源のすべてを活用し、国全体の電気を再エネで賄えるようにしていきたいと考えています。
もし「エネルギー・ハブ」ができれば、それがあらゆる問題解決の起点となって、例えば日本、バングラデシュ、アフリカでも問題に向き合う機会をつくり出せます。さらにその構造そのものをシステム化できれば、世界各地に持っていけるようになります。エネルギーはいつの時代も、世界のあらゆる国の主たる問題でもあるからです。
南米では強い風が吹き、風力発電の資源が多くあるでしょう。バングラデシュでは発電に十分なほどの風は、残念ながら吹きません。そのことは逆に、風車を回すほどの強い風がない地域には、微量の風でも発電できる風車を開発するテクノロジーが必要な示唆でもあります。
Photo: Yunus Centre/Nasir Ali Mamun
繰り返しエネルギーの重要性と、そこにブロックチェーンが組み込まれるからこその可能性に言及くださったユヌスさん。
次回はユヌスさんと大石さんが言葉を交わし、そこから生まれたワクワクする取り組みについて、公開は9/14(月)です!