【後編】今や電気もモノな時代|鈴木修司(BEAMS JAPANディレクター)
読みもの|8.26 Mon

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  鈴木修司氏の発想があり、近い未来には昨今増えている福島産再生可能エネルギーの、恒常的な販売までが視野に入っている。
 エネルギーを取り巻く状況は、気候変動に対する世界的な危機意識と共に激変中だ。
 今回の取り組みを通じ、少しでも個人の電力切り替えを後押しする目的で、みんな電力は1000円で購入できる切替カードで3000円分の電気を用意するほか、BEAMS JAPANでしかもらえない、次世代型携帯ソーラーパネル「solamaki2.0」のプレゼントを決めた。
 加えていとうせいこう氏からの賛同もとりつけ、9月21日(18〜20時)には同ビル4FのTOKYO CULTUART by BEAMSにて、氏を招いてのトークショーも開催される。参加条件は一つ、毎月電力会社から自宅に届く検針票を持参することだ。TOKYO CULTUART by BEAMSはまた、みんな電力の「みんな」に着目し、スペシャルTシャツも制作する。
 つまり約5週間にわたって、電気の世界で初の取り組みを祝う宴が行われるということだ。しかしまずは一度立ち止まり、深呼吸して、そのきっかけをつくった鈴木氏の言葉に耳を傾けたい。
牛乳石鹸、銭湯以外に、どんな成功例がありましたか?

別府温泉

湯けむりが醸す、素敵な風情

鈴木 大きな例としては別府市、別府温泉があります。これは3年間をしっかりと、それは行政の括りで一応3ヶ年計画ということで今年度で終わりなんですが、実は早くも「来年度も」ということで打診をいただきました。
 別府市長は何度もお会いしてるんですが、改めて最近文面でいただいたことがあります。
 僕がこういう仕事をする上で常日頃意識しているのは、「一過性で終えたくない」、「単発で終わらせたくない」ということです。それは、どうしても予算を組んでもらった間はできても、その後は正直細々とモノを仕入れるくらいしかできなくなってしまうから。ですので、予算がついて自分が関われている間に、できるだけその間にやっていることをその後も長く残るような企画にしたいと思っています。
 別府市との取り組みは「横の繋がりを増やそう。横の繋がりのきっかけになりたい」と思って仕掛けました。甘酒をつくっている大学と温泉水だけを売ろうとしている業者さんを繋げたり、アートに強いNPO法人さんとデザインをあまり意識されていなかったざぼん屋さんで協力していただいたり、そういうことを意図的にやったんです。
 そういう時にありがちなのは、「東京の有名デザイナーに頼んでオシャレにしよう」みたいなことです。でも「いやいや、そうじゃなくて、別府の横の繋がりでやりましょう」というのが響いてくれていたみたいで、1年目の成果としていきなり、地元の方々が独自で「ベップニュースタンダード」というのを立ち上げたということがありました。それは、「鈴木さんがああ言ってくれてるから、やってみたよ」みたいな、やる気が溢れ過ぎて動いてくれて(笑)。
 それを別府市長が見てくれていて、まさにそういうことを市としても待っていたと。地域の方々が、まず「新宿のBEAMSさんで売ってもらえる」ということでモチベーションを上げ、さらには横の繋がりで、後にBEAMSが抜けてもやっていける枠組みができたことがすごく嬉しかったとのことでした。

ベップニュースタンダード

ー地方が持つポテンシャルをどう見ていますか?
鈴木 月並みですが、やっぱり面白いと思います。「こんなに地域性がある国って他にあるのかな?」というか、うどん一つとったって、地方地方で全然違うじゃないですか。僕もかなり日本中まわって調べて、そこそこ情報を持ってる方とは思いますが、それでもまだまだ知らないことだらけです。
 だから東京、大阪、福岡みたいな「都会」と言われている地域も、僕としてはそれも地方の一つというか、逆に地方と中央みたいな感覚が最近なくなってしまったかもしれません。都会は産業自体が変わってくるので、「モノ」とか「面白いコト」という尺度で見ると、全然地方の方が面白いですよね。
ーその感覚は、お客さんにも伝わっていると感じますか?
鈴木 そう思います。BEAMS JAPANに買い物や、イベントに足を運んでくださる人たちは、間違いなくそう感じている方々じゃないでしょうか。
 例えばですが、もう過去3年、年末に必ずみかんを産地直送で扱っています。それが毎度考えられないほど注文を受けるんですが、考えてみてください。「BEAMSでみかんの注文」ですよ?それも、ダンボールで何箱とか。
ーその心理って何なんでしょう?

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鈴木 それも僕は「きっかけ」だと思っています。自分も含めてですが、買うきっかけ、試すきっかけが欲しいんだと思います。今、情報はいくらでもあるわけで、人々は試すきっかけ、食べるきっかけ、知るきっかけ、買うきっかけという、いろいろな「きっかけ」を欲してるのかなと。
 僕たちの役割はきっかけづくりと思っているとさっき言いましたが、みかんだって本当は買おうと思えば、スーパーにしろふるさと納税にしろ、いつでも買えるはずです。でもその時にBEAMSで試食して、彼女とそこにはデートに来ていて、格好つける意味もあって、じゃあ「美味いからBEAMSでみかん買おうかな」みたいな、そういうことかなと思うんです。
 ですので、僕たちはもちろん小売業ではあるんだけど、サービス業というか、芸人さんとかに近い職業なのかなと思ってて、、
ーどういうことでしょう?

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鈴木 もっと、それこそ水商売とかと似ているというか(笑)。それは、どこで呑んでも同じ水割りなんですが、「やっぱりあのママのところで呑みたいな」と思っていただくというか。
ーなんとなく、鈴木さんがなぜBEAMS JAPANのバイヤーを任されたのかわかるような気がしてきました、、そして、その鈴木さんのおめがねにかなったエネルギー、もっと頑張れる気もしてきました(笑)。
鈴木 電気の業界は僕たちの予想を超えているいろんなことがあるとは思いますが、みんな電力さんが羽ばたくきっかけになりたいと思います。
ー一番最初、電気のどんなところに面白さを見い出されたんでしょう?
鈴木 面白いというよりも、「可能性があるな」と思いました。そこはもっと言うと、「そうなってもらわないといけないんだな」というか。
 これは電気だけの話じゃありませんが、この社会には僕たちが知らずにただ決まっていること、お金を払わないといけないこと、やらないといけないことがすごく多いと感じています。
 そしてそういうことが、今時、もうちょっと違ってきているなと思うんです。なかなか変われないこともあるんでしょうが、せめて電気は自由化と共に変わりかけているじゃないですか。みんな電力さんみたいな会社も出てきて、「変わって欲しいな」という風に一消費者、一市民として思います。ぜひもっと「電気の世界で、何か面白いことやってください」という、そこはウチでどうこうできる話ではないので(笑)。
ー嬉しいお言葉です。

H30.1月:大堀相馬焼

国の重要無形文化財である相馬野馬追が大切な土地だからこその名産品

鈴木 あとは、これは会社として、福島に関わったことが大きかったと思います。震災があった直後からBEAMSとしていくつもアクションを起こしてきて、数年が経ったタイミングでジャパンとして「ふくしまものまっぷ」の企画をはじめました。
 それが、県からの依頼があって長い企画になり、僕も現場をまわらないとアイディアが出ないタチなので、一番最初は津波と原発事故の両方を受けた浜通りに行きました。ああいう現場を見たり、福島の人から直接お話を聞くと、僕も人間なので感じることもあるわけです。
 「ふくしまものまっぷ」の第一弾は大堀相馬焼でした。BEAMSにお客さんはハッピーで来てくださるので、シリアスやネガティブになり過ぎるのはよいことではありません。でも、まずモノが良いものであって、その上でのそういう仕掛けが、福島の方たちが一番気にしている「風化」というものに対する取り組みになるんじゃないかとは思います。
 ですからその先で、「ふくしまものまっぷ」で”福島の電気”を取り上げてみようと。するとそこにいたるストーリーや、今福島で盛んにはじまっている再生可能エネルギーの動きを伝えられたらという流れが頭に浮かんだのでした。
 以前県と話した時は、まだ時期尚早でした。でも間違いなく、今回のBEAMS JAPANでの電気の店頭販売は、BEAMSの福島県との取り組みが発端になっています。

H30.12月:ふくしまの酒

金賞受賞数日本一となった、ふくしまの酒

ー電気の店頭販売は日本社会として画期的で史上初、誰も思いつかなかったし、思いついたとしてもやらなかったことですが、ある意味必然的に繋がってきたというか。
鈴木 僕は食べるのが好きなんです。そういうお店の話をする時、行った店のダメな話はあんまり気分がよくなくて、それよりも「あの店いいよね!」という話がしたいなと思うんです。
 だから電気も、「あそこ産の電気いいよね!」とか(笑)、「あそこでつくられた電気使うといいことあるよ!」みたいな、そういう話をしたいと思っています。
 電気は今、どうしても複雑で面倒くさかったり不透明な、どちらかと言えばネガティブな話題になりがちですよね。
 そこが、電気=ポジティブな話題で、若い子たちが率先して語ってるという風になったら、それが一番だなと思います。僕個人はそうなって欲しいと思っているので、BEAMS JAPANもBEAMSとしても、できる限りのことはやっていければと思います。

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BEAMS JAPANから全国各地の魅力を再評価してきた鈴木さんだからこその、エネルギーの見方は大変参考になりました。
そして、史上初めて、まさにエポックメイキングな電気の店頭販売は28日(水)から10/1まで。
そこで電気の切替カードを購入し、実際に切り替えた方には、本当にスペシャルな特典もついてきます。ぜひ、、!

 

(取材:平井有太)
2019.08.13 tue.
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鈴木修司

1976年生まれ。三重県松阪市出身、鎌倉在住。1998年にビームス入社。メンズ重衣料からメンズカジュアルウェア、そして“fennica”の前身である“BEAMS MODERN LIVING”の店舗スタッフ、その後に“fennica”のMD、 “B:MING LIFE STORE”のバイヤーを担当、現在は“BEAMS JAPAN”のバイヤーに従事する。

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