【初回】みんでん鼎談|ブロックチェーンのアツい本質
読みもの|8.11 Tue

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  去る7月30日(木)、みんな電力から出されたリリースにはこうある。
「このたびの事業多角化を実現するため、ブロックチェーンを活用し、2018年に当社が世界で初めて商用化したP2P電力トレーサビリティシステム『ENECTION2.0』の処理速度を60倍高速化しました」
 将来的に、みんな電力がブロックチェーンを利用してトレーサビリティを実現するものとして、すでに電力以外に空気、土、バッテリー、広告、デジタルコンテンツなどが控えているという。
 しかし、そもそもブロックチェーンとは何で、速度が60倍とは何を意味するのか?想像するに、大半のみんな電力社員にとっても未知なことが満載な、一見このアンタッチャブルな領域に、ENECTは初めて踏み込むことにした。
 チームを牽引した飛峪(とびさこ)龍一さん、まったくの別業界からブロックチェーンの可能性に惹かれて飛び込んだ森本詢さん、そして全体を監督していた鈴木雄介さんに集まっていただくも、まず耳に入ってきた会話は以下の通りー、、

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森本 僕昨日からクロスチェーンのプラットフォームでテストDapps書き始めましたよ!なんて言ったっけ、Porcadotじゃないけど、、
飛峪 Substrateですか?Plasmですか?
森本 ん~、、ど忘れしました。とりあえずクロスチェーンのやつですね。
 それは、「スマートコントラクトとは?」って定義できないなと思って。いろいろあって、もう「バックエンドです」としか(笑)。
飛峪 今までは制約が厳しくて、どのチェーン使うか、目的によって「チェーンの制約があるからしょうがない」、「チェーンに合わせて頑張ろう」みたいなことが、今後はクロスプラットフォームとか、スケーラビリティとインターオペラビリティが発達したおかげで、あらゆるチェーンが繋げるようになりました。ようやく、ユーザーが「どれを使おう」じゃなくて、逆にやりたいことありきで選べる時代に入ってきたようです。
森本 クロスチェーンを使ってデザインして書き切るみたいなノウハウを持ってないと、結局は流される。情弱は弱くなっていく感じがしますよね。
飛峪 本当にその辺だと思います。
 昨日私もRust言語の勉強をめっちゃしてまして、理由はやはりノードの処理でしょうか。あの辺を書く言語は、Rustが多い。理由はやっぱり、C++を使うことがもともと多かったと思いますが、処理速度とか、メモリのリークとかの安全性を考えると、Rustが優れているらしいです。

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ー正直ここまで、ほぼほぼ宇宙語を聴いてる感覚でしたが、、
 でも今や、知る知らざるとは別に、望む望まざると関係なく、すでにブロックチェーン技術は、私たちの生活の中にかなり入ってきているし、今後もっともっと入ってくるのだろう思います。であれば、その背景にあるものを私たちが知ることが、少しでもいい影響を、私たちの生きる姿勢や物事を見る姿勢に与えてくれるんじゃないかと想像します。
 ブロックチェーンはそもそも、社会に何をもたらしてくれるものでしょうか?

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飛峪 実は私にとって、ブロックチェーンが日本社会にもたらす影響は「ネガティブ」な印象しかないんです。
 少し変わった角度からのお話をさせていただきます。
 常々日本は真にアメリカナイズされていないというか、どちらかというと、いい意味での社会主義な国であるように感じてきました。そして今も、それを享受している方々、つまり世の中の社会制度に守られている方々がいます。
 そこでブロックチェーンは、究極的には非中央集権を実現するツールです。極論の暴言として言葉で表すと「国境を越えて行こう」、「銀行組織を潰そう」といったコンセプトが背景にあり、P2P(Peer to peer)の取引を真の意味で、個々人の裁量によって実現させることができます。

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 日本社会にありがちな、大企業じゃないと「コネクションがない」、「信頼がなくて取引できない」といった状況を「根底から潰す」、「変える」ということがブロックチェーンの根っこだと、私は思っています。
 その意味において、日本のある層、一般的な市民にとって、ブロックチェーンはネガティブな材料ではないかと思うんです。もっとわかりやすく言うと、「ぬくぬく暮らすことができなくなってしまう」ということです。
 今でも、これはすでに少々飽和状態と言えるかもしれませんが、例えばYoutuberが台頭してきて、一般市民が才覚さえ発揮すればポンッと飛び抜けることができようになりました。それも芸能人の方々にはすぐできる簡単なことかもしれませんが、ブロックチェーンのインフラが整えば整えばうほど、そういったことが当たり前の世界になっていきます。
 言うなれば、昭和の風潮みたいな「汗水垂らして働けば、おマンマ食えるよね」ということが崩れつつあるんじゃないか。ブロックチェーンはそれを加速させる要因に、必ずなっていくだろうと思ってます。

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 ですので、私自身はもちろんワクワクしています。こういうITに関わっている人たちも、だいたい皆さんワクワクしているだろうと思います。でも、「ついていけない人たちが置き去りにされてしまうだろうな」という意味で、真の競争社会が来るということです。
 アメリカでは今もBLMなどイロイロやっていますが、ああいった問題の根底にある格差は、日本の何十倍と言えるでしょう。相当な資産家以外はのんびり生き辛くなってしまった社会であり、逆に言えば、あらゆる人々に均等にチャンスが与えられるようになっていきます。私はそれを「よい」と思いますが、日本にとってはそれを受け入れる上で、すごい障壁があるんじゃないかと思うんです。
ー少し前までは総中流社会で、右へ倣えでまわりと同じことをやっていれば生き残れたのに、これからはそうはいかないし、逆に状況を突破したいと思っている人にとってはチャンスでもある。

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飛峪 まさにそうです。
 例えばYoutuberも、動画のセンスや話術を鍛えないとトップになれないとか、競争は激しいと思います。でも今森本さんがやられているようなP2P事業で、それによって個人と個人を直接つなぐインフラさえできてしまえば、後は個人同士の競争力に委ねられるようになるでしょう。それによって競争は活性化し、結果として経済は発展するとは思いますが、ネガティブな面も多々あると思うんです。
 ですから、そういうことについて警鐘を鳴らして、今まで勉強してこなかった、投資活動もしてこなかった方々、つまり言われたことしかしてこなかった人たちに対して、「今こそ意識改革をしなければついていけなくなっちゃうよ」。「お給料もらえなくなりますよ」という想いがあります。
ーありがとうございます。すでに隅々まで話してくださったような気がしますが、森本さんは、ブロックチェーンのどこに惹かれましたか?

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森本 僕は前職がコンサルで、「会社の次の40年を考えよう」とか、そういうことを経営陣とつくったり、事業を具体的につくるようなことをしてきました。その中で扱ってきた、「インダストリー4.0」という大きな潮流があります。
 そこにはAIとか、未来に向けて役立つ汎用的な技術、ロボティックスの発達なんかもそこに入るんですが、技術界の大きなイシューとして「プライバシー」というものは必ず出てきます。また、「データをどう使うか」、「データの汎用性」みたいなことも重要です。
 特に「社会に新しい技術を実装しよう」という時、必ず話題にあがるのが「プライバシー」なんです。一番最初に「Google Glass(グーグルグラス)」というスカウターみたいな眼鏡が出た時、すごく非難されてまったく売れませんでした。それは、知らないやつに自分の顔を見られた時、自分のデータを全部持っていかれるという、自分に彼氏いるかいないかまで一瞬でわかられちゃう、「そんな気持ち悪い世界は嫌だ」という運動が、グローバルにあります。
 ヨーロッパはGAFAが嫌い過ぎて、2018年に、ヨーロッパ人のデータをEU外に出すと法外な金額を請求するGDPRという法律をつくりました。

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 実はブロックチェーンは、一つの会社がデータを寡占して、それによってイロイロなものをドミネーションしていく、それも人々が、本来立ち入られたくないところまでドミネーションしてくる問題が結構起きている時に、結構効いてきます。
 自分自身のプライバシーを、今はアカウント登録時に名前と生年月日、現住所と口座、クレジットカード情報と打ち込んで、イロイロな会社に点在させています。それがブロックチェーンの場合、「公開カギ」という、別にこれを知られていたからといって自分のプライバシーとそんなに紐付かないものを、ポンと渡して「以上、終了」なんです。自分では別に「秘密カギ」を使って物事を動かしていくので、自分のプライバシーをどう扱うかということも、自分で選択する権限を持てるんです。
 つまり、姿勢として「自分の名前を売るよ」ということなら売れます。そういった「自分のプライバシーは明確な価値である」という、これからの時代にアプローチできるわけです。
 ブロックチェーンのことをすごく簡単に言うと、「足跡が残るただのインターネット」という風にも言えます。
 ですので、仮に今みんなが使っているアプリケーションの裏で動いている、計算してくれる機能をブロックチェーンに置き換えた時、何がいいかという言うと、一つには足跡(取引履歴)の改ざんがまったくできません。もう一つは、取引のロジックについて、後からチョコチョコ付け足すとか、抜け穴をつくるみたいなことも絶対にできません。

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 今までは企業を信じて自分のデータやお金を預けていましたが、「企業じゃなくてロジックを信じる」というやり方で、「ウェブというものとプライバシーの人々の捉え方をガラッと変えましょう」というのが、ブロックチェーンの一つの革命かなと思っています。
 僕が「ブロックチェーン、すげえ」と思ったのは、「サイファーパンク」というメーリングリストがあるんです。70年代くらいにアメリカで流行っていたもので、そこでは今世界中で起きているプライバシーをとりまく問題だとか、そこへ至るネットワークの革命がすごく重要になってくるとされていました。
 ブロックチェーンはいわゆるP2Pネットワークの一つですが、僕はそういうものを最初に考えた人たちが、「技術は、社会が進むだいぶ先にある」みたいな、技術的な人たちが描いただいぶ先の未来が、その後の現実になっていくという世界観に影響を受けました。 
 今AIはずいぶん使われるようになって商用化も進んできていますが、まだブロックチェーンはあまりうまくビジネスになっていない。でも今後「世の中を変えていきそうだな」という雰囲気をフワッと感じていて、それでブロックチェーンが大好きという感じです(笑)。

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飛峪 やはり、AIの次はブロックチェーンですか、、?
森本 次なんでしょうか?10年後とか、または30年後って言う人も、イロイロいますよね。

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鈴木 まだブロックチェーンの導入が、森本さんが仰るように、すごい可能性はあるはずなのにそこで弊害になっているのは、何でしょう?
森本 一つはUXとしての面倒臭さだと思います。今まで自分で管理せず、まったく考えなくてよかったものについて「考えろ」と言ってくるのがブロックチェーンです。
 「選べますよ」ということは実はすごく不自由で、みんな電力がやっている「あなたの使う電気がどこからきて、何時から何時までは誰々が発電したものか選べ」みたいなことも、実際に全部自分で選ぶとなると超面倒臭い。そういった、新しい作業を要求してくるわけです。
 ブロックチェーンの場合は「秘密カギ」を自分で保有して、それを絶対誰にもバラさない環境で保管して、その上ですべての処理を行う時にそれでサインもしないとならない。そしてそのサインの仕方も、技術者ならわかるけど一般の人にはちょっとわかりにくい作業を通過しなきゃいけない、そのUXが悪いという点があります。

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 ブロックチェーンは、2つの意味でのイノベーションをひっくるめた言葉で、一つはウェブスリーというやつで、もう一つは通貨の革命です。ブロックチェーンが一気に社会に知られた時、その通貨の方に最初にフォーカスされたわけですが、みんなそこに投資して、一気に大ゴケして、ブロックチェーンというと怪しい株式みたいなイメージを持たれてしまった。それで今一つ広まらないんじゃないかなと思います。
 でもそれはtoCの話で、そこがtoBになると、利点として「使える部分があるよね」ということを知ってる会社は多い。だからそれこそみんでんのように、その部分だけでビジネスに使うということは増えてきました。
 ですので、ウェブならではの、個人が一気に広めるといったことがなかなか起きなくて、今のところは企業対企業の範囲に広まっている気がします。

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飛峪 すみません、これは私の視野が狭いせいだと思うんですが、ブロックチェーンが「広がっていない」という印象がないんです。
 普段からブロックチェーンについて調査をしていると、「オーストラリア政府が選挙で使ったね」とか、「韓国でもだんだん増えている」、「アメリカでも非中央集権の恩恵を受け続けていて」みたい情報が随時入ってきます。だからこそ逆に言うと、日本だけがガラパゴスに近くて、「日本の導入が遅れているのはそこにも原因があるよね」、「世界では順調に進んでいるよな」ということを感じます。
 もしかすると、そういう側面の事実を受けた上で、みんでんにとっても「そこの溝をどう埋めるか」が大事なポイントなのかもしれません。

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とびさこ写真

飛峪 龍一

1974年大阪生。Grid World合同会社代表。
小学生の頃からプログラミングに親しみ、アセンブラで書いたゲームソフトが雑誌掲載された事が自慢。専門学校で情報処理とコンピューターサイエンスを学び、社会に出てエンジニア/プロジェクトマネジメントを多数牽引。
2016年に暗号通貨と出会い、ビットコイン投資を歴てブロックチェーン技術に興味を持つ。海外ブロックチェーンホワイトペーパーの紹介記事を執筆し雑誌掲載複数。
後にブロックチェーン専門企業でエンジニア兼マネージャーとして開発従事、ブロックチェーン教材開発、ブロックチェーン大学校の講師担当、海外ブロックチェーン実証実験参加、ビットコイン取引所アプリ開発参加等を経て、みんな電力プロジェクトに参画。
みんな電力ブロックチェーンチームと共にスケーラビリティー問題解決に従事する。
ブロックチェーンハッカソン「Decrypt Tokyo 2019」優勝

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森本 詢

1990年東京生、日本大学第三高校、京都大学農学部卒業。
2013年から2018年までコンサルタントとして国内の企業の組織開発、事業開発の支援に従事。インダストリー4.0のインパクトの大きさに危機感をもち、グローバルな開発者コミュニティの東京ブランチ立ち上げに参画。
コミュニティの技術者との会話の中でサイファーパンクのメーリングリストのことを知り、技術者の描いた世界観が、40年後に現実のものになってきている事実に衝撃を受けてブロックチェーンの世界に興味を持ち、ブロックチェーンエンジニアにジョブチェンジ。
現在はみんな電力のブロックチェーンチームで開発業務に従事している。

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鈴木 雄介

1985年静岡生、静岡県立農林大学校卒業。
園芸店・生花店勤務を経て12年前にシステムエンジニアへジョブチェンジ。3年前に、当時関わっていたシステム案件を通し再生可能エネルギーへ興味を持ち、みんな電力へJoin。
現在はシステム案件の立ち上げ支援やシステム部メンバーの後方支援を行う。

その多くは、仮想通貨の世界から私たちの耳に入ってきた「ブロックチェーン」という言葉。いかがわしいもの?と思いきや
それは行き詰った現状を打破してくれるかもしれないツールであり、みんな電力の在り方とも重なります。次回もお楽しみに

 

(取材:平井有太)
2020.07.31 fri.
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