【最終回】老舗銭湯「電気湯」のサステナビリティ
開店直前の女湯にて。大久保さんは「電気湯ラジオ」なる配信もしていて、最新回のゲストはみんな電力・間内賢氏
実際に振興策を必要としている業界から、「銭湯の申し子」と呼ばれることもある大久保さんのお話、ここまでいかがでしたでしょうか。
都市デザインを学び、SDGs特使として日本の若者を代表すべく国連で経験を積み、「もっと地域で生きる人たち」をつくりたかったし、または「そういう街であって欲しい」と考えてきたと語る大久保さん。最終回のお話は、下町全域が抱える海抜0m地帯の、気候変動リスク=荒川や隅田川の氾濫の可能性からはじまります。
全3回を経て、近所の銭湯に行けば、またその心地よさも変わってくるのではないでしょうか。ぜひ、お楽しみください。
だから僕、本当にめっちゃやりたいんです。BEAMSの時の「でんきのカード」を売って、同じイベント時のコンセントの壁も置きたいです。そういった、自分のやりたいこともできればと思って、今内装の改装工事もしています。
BEAMSさんて、最先端のおシャレなアパレル企業なようでいて、実はすごい地産地消みたいなことも推してて、もともと興味がありました。
だって銭湯って本来もっと、それは「ご近所銭湯」という風に呼ばれる、ちょっと汚くても居心地よくて実家みたいな雰囲気というか、それが最近の流れで、デザイナーズ銭湯みたいになってきています。そうやってハードルが上がってしまうことで、ついていけない店舗も出てきてしまう。とはいえ銭湯って本当は自分の店や地域だけじゃなくて、「みんなが繁盛するように」ということを考えないといけない業界なんです。
最近のデザイナーズ銭湯を見るとみんな焦って、「きれいにしなきゃ」「格好よくしなきゃ」という風になりがちです。でも、そうじゃない。まずはちゃんとした「ご近所銭湯」として、それぞれをアップグレードさせていく必要があると思っています。もちろん、銭湯側がそのままでいいということではありません。
そのすごくいい例が北区、JR駒込駅にある殿上湯という銭湯があります。ここは本当にすごいです。おシャレなのに、ちゃんとご近所銭湯もやれている。地元の方々がすごい来ていて、めっちゃセンスもよくて、ウチもちゃんとそうあれればということで、模索しているところなんです。
だから、「銭湯」が注目されたのは確かにデザイナーズ銭湯のおかげなんですが、銭湯業界自体に閉塞感、行き詰まり感があるのもデザイナーズ銭湯のせいでもあるかもしれないという、、功罪ともにあるというか(笑)。
例えば銭湯に牛乳を運んでくれるおっちゃんだって、「そんな店は今や小村井に一軒しかなくて、そこから毎日車で運んでくれて、しかもそのおっちゃんはもう80歳だ」みたいな、本来発信すべきはそっちのストーリーなんです。
一番湯のために開店前から並ばれているお客さまとも、すでに旧知の仲
それは、川口市にある喜楽湯さんという、中橋悠祐さん(初回記事に写真アリ)という方がやっている銭湯があって、、
電気湯の仕事とも関係なく、行く先々で近くに銭湯があれば行ったりします。あとは僕自身がまわりと自分を相対化しながらでないと案がでないタイプで、ちゃんと「まわりを観察・分析しながら自分のポジションを見つけていく」作業が必要なんです。
そしてその喜楽湯さんは2016年頃からリニューアルした銭湯で、デザイナーズ銭湯の先駆けみたいな存在です。
本当にいい銭湯なんですが、コロナの時に極端にお客さんが少なくなってしまった。その理由は、そこはすごくいい銭湯なのに、来ている大多数が遠くの人たちでそれもあって毎日混んでいて、比較的地元の方々が少なかったそうです。それで店主の方が、今また改めて地元のお店をまわってコミュニケーションをとってということをはじめられています。
そういう話を聞きながら、やっぱり「地元にしか愛されてない店もいいな」ということを考えています。
待合室の改修も、仲間たちと力を合わせて
それで僕は、そもそもは「電気湯」のブランディングをしようと思っていたんですが、もっとその手前に「電気」というブランディングもあるんだなということに気づいたんです。それが、「みんな電力さんとちゃんとコラボがしたい」と思った発端でした。
「持続可能な銭湯」は、ちゃんと極めたいなと思っています。銭湯で持続可能性を言う銭湯はそれなりによくあります。でも、何というか、やることと言うと、例えば「〜湯」と言って、不揃いな野菜をお湯に浮かべちゃったりするんです。ああいう野菜だって、普通に食べられるもので「もったいないな〜」と思ったりしています。
まだ「持続可能=サステナブル」の意味がいまいち噛み合ってないというか、もっと着実にできたらと思います。
僕は、もともと国連関係の仕事をして、SDGsについても研究機関と一緒にやった経験も通じて、普通に詳しくはあるかなと思います。ちなみに岸田元外務大臣が国連で発表した時、一緒に行った僕を含めた6人くらいのメンバーが、当時日本からの代表団でした。
それ以降、国連に日本のユース代表団として参画していたのですが、やっぱり実際に「銭湯」となった時、みんなから「ちゃんと持続可能性を」と期待されても、正直「できるかな??」という感覚もありました。
でもこれから、みんな電力さんと、そしてウチとしてはガスも課題なんですが、しっかりやっていきたいと思っています。
その取り組みの一環として、待合室を一つにしても手を加え続けるというか、「柔軟さを失わないように」という姿勢とか、やりたいことはイロイロあって、例えば「LGBT風呂」とか、、
ぜひ、ゲストにみんな電力・間内が登場した大久保さん「電気湯ラジオ」もお聴きください。銭湯と再エネが組んだことで広がる可能性がわかります
銭湯界の未来を担う大久保さんのお話はこれで終わり。近所の銭湯に行きたくなりましたか?私はこれから、行ってきます!