古紙再生から生物多様性まで、優しいこだわりの「古紙からできた消毒ジェル」
読みもの|1.28 Fri

SNSキャンペーンに参加していただいた皆様にお送りさせていただく特典の一つであるサーキュラーバイオジェル。実はこのジェル、古紙を材料につくられたものなんです。

「消毒できるの?」「なぜ古紙から?」「そもそもどうやって?」次から次へと浮かんでる人も多いかもしれません。かくいう筆者も、はじめてきいたときは、「?」となんと返せばよいかわかりませんでした。
でも、実は、古紙からできた消毒ジェルは、紙の廃棄や感染症が問題になっているこのご時世にまさに生まれるべくして生まれたモノなのです!

ということで、今回は古紙から消毒ジェルを生み出したGreen Earth Institute株式会社(以下GEI)の代表取締役CEO 伊原智人氏にインタビュー。古紙再生から生物多様性まで、環境にも人にもとことん優しいこだわりの消毒ジェルについて詳しくお話を伺いました。

目次

Green Earth Instituteとはどんな会社?

伊原:GEIは、植物等のバイオマスからさまざまな化学品を作り出すバイオリファイナリー技術を開発、事業化している技術開発型ベンチャー企業です。バイオリファイナリー技術とは、バイオマスを微生物に食べさせて、微生物が本来持つ代謝系を利用し、有用な化学品を生産する技術です。 

バイオマスとは?
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」。石油や石炭のように枯渇する恐れがなく、またバイオマスを燃焼させたときに出る二酸化炭素は、生物の成長の過程で大気から吸収されたものなので、大気中の二酸化炭素を増やすことがない「カーボンニュートラル」な資源として注目を集めています。

ー「植物を微生物に食べさせて化学品に変換する」とはどういうことでしょう?

伊原:基本的には、ビールや日本酒のつくり方と同じです。例えば、お酒をつくる際、『発酵』というプロセスがありますよね。このときに用いられるのが『酵母菌』という微生物です。酵母菌が麦や米などを混ぜ合わせて仕込んだものを食べることによってアルコール分が生成されます。

お酒をつくるときには酵母菌が用いられますが、他にもバイオマスから多様な化学物質をつくれる微生物がたくさん存在しているのです。

例えば、コリネ菌と呼ばれる上野動物園の水鳥の糞の中から発見された微生物は、アミノ酸の一つであるグルタミン酸を生産するときに使われています。グルタミン酸からどんな製品がつくられるかというと、例えば味の素等の旨味調味料があります。微生物が作った製品は私たちの生活の中に溢れています。

コリネ菌の写真

GEIではそういったさまざまな微生物を利用してことによって、アミノ酸やバイオプラスチックの原料である化学品を生産する遺伝子組み換え微生物やバイオプロセスを開発しています。

古紙から消毒ジェルどのように作られている?

小さな微生物の偉大な力

ーサーキュラーバイオTMジェルも微生物の力を使ってつくられているのでしょうか?

伊原:その通りです。『古紙』と聞くと、本や新聞紙を想像する人が多いですが、元をたどれば、古紙も植物からできています。つまり、古紙もバイオマス資源です。エタノールを生成する『アルコール酵母』と呼ばれる微生物にそれを食べさせることで古紙由来のエタノールが出来上がるのです。

ー微生物は古紙をそのまま食べるのですか?

伊原:いいえ。微生物が食べるのは植物に由来する糖です。なので、古紙を糖に変換して、微生物に食べさせています。

効能と安全

ーサーキュラーバイオTMジェルはどのくらいの効能があるのですか?

伊原:アルコール度数は約60%ほどです。日本で衛生管理に効果があると言われている70%には届いていないのですが、WHOの基準では60%で十分効果があると言われています。

また、有効成分としてベンゼトニウム塩化物を配合していますので、厚労省の定めているして医薬部外品の外皮消毒剤の承認基準を満たしたものです。

ベンゼトニウムとは?消毒液などによく使用される物質。抗菌効果のみならず洗浄効果があり、口腔内や手指など体のさまざまな部分に汎用可能。手指に使われるときは、保湿剤と消毒用エタノールと一緒に使われることが多い。

ーその他に効果はありますか?

伊原:皮膚に直接つけるものなので、保湿成分も配合しており、安心してお使いいただけます。

微生物へのこだわりとパッケージに込められた思い

ーサーキュラーバイオTMジェルをつくったときのこだわりはありますか?

伊原:遺伝子組み換えの微生物は使っていない点です。

先述したように、微生物によって作れる化学品が変わってくるのですが、微生物の遺伝子を組み替えることによって、同じ微生物でも違うものを作れるようになることもわかっています。

ーボトルのパッケージにもこだわりがあるとか?

伊原:そうなんです。パッケージには福祉実験ユニット、『ヘラルボニー』さんのデザインを使わせてもらっています。どうせ使うなら、手に取った時に少し楽しくなるというか、消毒ジェルとしてだけではない価値を、使う人たちに感じてほしかったのです。

ヘラルボニーさんは『デザインを通して、知的障害のある人が「できない」ことを「できる」ようにするのではなく、「できない」という前提を認め合う社会を目指す』一方、私たちは『バイオマスからさまざまな化学品をつくる』。一見全然関係なさそうですよね。でも、2つを組み合わせることによって『消毒液=コロナ対策』というネガティブなものが、『社会にも環境にも優しい、持ち運びたくなるようなスタイリッシュな消毒液』っていうポジティブなものになる。

いろいろな人と協力することで、それぞれの良さがいつもとは一味違う形で社会に広まる。そんな化学反応の良さが製品を使う人にとっても価値になったらいいな、という思いがこのパッケージには込められています。

きっかけは再生紙を作る会社からのオファー

ーなぜ古紙をジェルにしようと思ったのですか?

伊原:古紙を消毒ジェルにしようと思いついたのは実は私たちGEIではなく、かねてよりお付き合いのあった再生紙を販売している会社、『森田紙業』さんからの提案でした。

近年、デジタル化が進むことにより、紙の需要は減少しています。これは再生紙に関しても同じで、古紙から紙を作っても、以前のようには売れません。つまり、古紙から再生紙を作っても需要がないので、結局燃やされてしまう。

これでは、せっかく古紙回収をしても意味がない。そのときに森田紙業さんが目を付けたのが、「古紙からエタノールが作れる」という研究でした。

シュレッダー古紙を発酵槽へ投入している写真

その研究をしていた人物がたまたまGEIにおり、「じゃあ作ってみようか」という話になってできたのが今回のサーキュラーバイオTMジェルです。

微生物ってすごい!バイオマスが照らす地球の未来

ーこれからの展望を教えてください。

伊原:今回はサーキュラーバイオTMジェル第一弾ということで、ジェルの容器として採用しているのは普通のプラスチックボトルです。これでは、まだ「脱炭素」とは言えない。

ですので、ゆくゆくは、このプラスチックもバイオプラスチックにしたり、詰め替えを用意することで、ボトルを捨てないようなシステムをつくることを計画しています。

また、今回は内容量が30mlと、携帯用のサイズですが、次は商業用施設などでも使えるように500mlのボトルタイプも作ろうと思っています。ボトルを置いて、あとは施設を管理する人たちに補充してもらえば、ボトルの廃棄も出ないですからね。消毒ジェルのつくり方だけではなく、それを使う人たちの使い方もエコにできるよう、システム作りやサービス化を進めていく予定です。

ー最後に、GEIの目指す世界観を教えてください。

伊原:私たちのミッションは『グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む』です。これからも、バイオマスを活用し、エネルギー、食、公衆衛生などさまざまな社会問題を解決していきたいと思っています。

微生物は、目に見えないけれど、凄い力を秘めています。文句も言わずにちゃんと化学物質を作ってくれる。そんな生物の不思議や生物多様性の大切さについても、私たちが作る製品を通して伝えていけたら、と思います。

まとめ

古紙の再利用から微生物の働き、そして福祉など、さまざまな分野にとことんこだわってつくられた人にも環境にも優しいサーキュラーバイオTMジェル。微生物の力を借りれば、古紙にとどまらず、私たちの身の回りにあるものでさまざまなものを作ることができる。「微生物の力を借りて次に何を作ろうか?」そんなわくわくが止まらないインタビューだった。

持続可能な社会への道は、きっと、人間だけでなく、目に見えない微生物も含めた地球に生きるすべての生き物たちが力を合わせることで開けるに違いない。

#アップサイクル #オーガニック #再エネ #持続可能な社会 #読みもの
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記事を作った人たち

タドリスト
廣瀬あかね
横浜出身、東京在住。国際教養大学在籍中。メンタルヘルスの医療化と新自由主義の影響について研究中。好きなことは読書、お絵かき、誰かと話すこと。最近は相席食堂にはまっています。