環境・人・社会のあらゆる観点から見た「よい服」を。ファーストリテイリングが掲げる新たなビジネスモデルとは?
読みもの|12.9 Thu

12/2にユニクロやGUなどのアパレルブランドを持つファーストリテーリングは、あらゆる人の生活を豊かにする「究極の普段着」というLifeWearの考え方を進化させ、従来の指針としてきたデザインや価格だけでなく、環境・人・社会の観点を含む「よい服」の定義の応える服作りを進めていくことを発表した。

会場は今回の発表会の指針が環境問題・サステナビリティなので「みんなが同じ目線で考えられる場を」というテーマをもとに、プレス記者も登壇者も同じ舞台で円を囲む形に。

目次

コンセプト

今回の発表で明確に示されたファーストリテーリングの指針は、調達から、顧客に商品が渡ったあと、そして廃棄までの一連の流れにおいて「環境」と「人と社会」にとことん配慮し、資源や健康な人々の生活を守るための持続可能なサービスや技術の開発に取り組むことが新しいビジネスモデルとして掲げられた。

今回の指針に合わせて発表された「4つの約束」。

左側のサークルは自社のサプライチェーンを表しており、トレーサビリティへのこだわりや環境への取り組みなど、これまでファーストリテーリングが構築してきたパートナーシップ先を含めた環境配慮、労働環境の整備を行うことを表している。

一方、右側のサークルが表すのは、服の新しいバリューチェーン。社会貢献や、サステナブル素材を使ったマテリアル、そして、長く使える服の開発、衣類を長く使うことへの価値創造などを通して持続可能な取り組みを新たに推進、強化していく方針を打ち出した。

環境に「よい服」

温室効果ガス排出量削減に向けた目標と具体的取り組み

【自社領域目標:2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で90%削減】

  • 店舗での省エネルギーへの取り組みを強化し、電力使用量を削減。2019年度比でロードサイド店舗で約40%、モール店舗で約20%の削減を目指す。
  • 2021年度までに国内ユニクロ既存8店舗が建物としきちりようにおける国際的な環境性能評価システムLEEDの既存建物の運用・保守分野においてゴールド認証を取得。

LEEDとは?
LEEDは、非営利団体USGBC*が開発、運用し、GBCI**が認証の審査を行っている、ビルト・エンバイロメント(建築や都市の環境)の環境性能評価システム。 USGBC*: U.S. Green Building Council, GBCI**: Green Business Certification Inc.コストや資源の削減を進めながら、人々の健康に良い影響を与え得ることに配慮し、また、再生可能なクリーンエネルギーを促進している建築物の認証を行っている。
(参照:LEEDとは

  • 店舗の設計の段階からエネルギー効率の高い新たな店舗フォーマットを開発し、2023年中にプロトタイプ店舗の出店を目指す。
  • 2030年度までにファーストリテーリンググループ全体の店舗と主要オフィスで使用する電力を、再生可能エネルギー100%に切り替える。

【サプライチェーン領域目標:2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で20%削減】

  • 取引先工場とのパートナーシップにより、自社事業に関連する排出量全体の90%を占めるサプライチェーン領域での確実な目標達成を目指す。
  • 2021年11月までにユニクロ及びジーユーの生産量の9割を占める主要工場を対象に、個別の状況を把握した上で、省エネ、脱炭素、再生エネルギーの導入などを織り込んだ温室効果ガス削減計画を策定完了。
  • 計画実行に向け、生産部・サステナビリティ部によるモニタリングと進捗管理プロセスを整備。

【商品領域目標:2030年度までに前肢用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替え】

  • レーヨン、ナイロンなどの化学繊維から段階的に低環境負荷素材の導入を拡大。(2019年以降、2021年秋冬シーズン商品で全ポリエステル素材の約15%が回収ペットボトルから再生されたリサイクル素材に切り替え済み。)

廃棄物削減の取り組み

商品をお客様に届ける過程で使用する商品パッケージ、ビニル袋、ハンガーなどを削減、より環境に配慮したマテリアルへの切り替え、再利用、リサイクルなどを通して、早期に「廃棄物ゼロ」を実現する。

人と社会に「よい服」

サプライチェーンの透明性向上

  • 現在公開されている主要縫製工場、素材工場の開示に併せて、2022年3月を目途に継続取引のある全縫製工場を開示予定。
  • 自社による訪問や第三者機関の監査や認証を通して、人権や労働環境の問題の早期把握と是正を徹底。
  • サプライチェーン全体で、人権デューデリジェンス実施と人権リスクの早期把握を推進。

人権デューデリジェンスとは?
企業活動における人権への負の影響を調査・評価し、それを防止、停止、軽減させること。

倫理的かつ責任ある方法による原材料の調達

植物系素材、動物系素材それぞれに調達方針を定め、倫理的かつ責任ある方法による原材料の調達を推進。

社会貢献のグローバル推進

  • ファーストリテーリングとパートナシップを結んでいる財団とともに、服の事業を通じた社会貢献活動をグローバル規模でさらに拡大。
  • 2025年度までに100億円規模で社会貢献活動に投資。グローバル全店舗で地域貢献活動を実施、難民や社会的に脆弱な立場の人々、次世代、文化芸術、スポーツの領域で1000万人を支援。医療支援も年間1000万着に拡充。

ダイバーシティ&インクルージョン

  • 2030年度までにグローバルで全管理職における女性比率を50%に引き上げ。
  • グローバルで次世代のリーダー・経営者の育成を強化。
  • 障がい者雇用に加えて、店舗のユニバーサルデザイン化。多様化する顧客の需要をかなえられるよう、商品やサービスを拡充。
  • LGBTQ+従業員及び顧客に配慮した事業環境を実現。

まとめ

ユニクロやジーユーなど、私たちの生活に身近なアパレルブランドを抱えるファーストリテーリング。お客様の目線に立ち、価格、デザイン、品質にこだわる姿勢はもちろん、さらに環境や社会などのマクロな視点も経営指針として掲げるのは、大きビジネス転換と言えるだろう。「衣料品業界に産業革命を起こす」と取締役 グループ上席執行役員 柳井氏が話すシーンもあった。その産業革命の先に、どんな未来を作ろうとしているのか、ファーストリテーリングのさらなる活躍に期待したい。

#アップサイクル #オーガニック #再エネ #持続可能な社会 #読みもの
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記事を作った人たち

タドリスト
廣瀬あかね
横浜出身、東京在住。国際教養大学在籍中。メンタルヘルスの医療化と新自由主義の影響について研究中。好きなことは読書、お絵かき、誰かと話すこと。最近は相席食堂にはまっています。