ITはかせMr. Hiroseのデジタルをタドる!Vol. 2「コンピュータができるきっかけ」
読みもの|9.22 Wed

前回はデジタルとは何か?をたどり、本来アナログで存在しているものを数値化してコンピューターで扱いやすくしたものがデジタルということが分かりました。それでは、今回は、そのコンピューターができるきっかけは何だったのかをたどってみます。

目次

■ 計算する道具をたどってみると・・・

全てはモノを数えることから始まりました。ロビンソン・クルーソーは無人島に流れ着いたとき、歴を作るために木の柱にナイフで刻みを付けて過ごした日を数えました。言葉の中にローマ人が石を使って数えていた痕跡が残っています。計算機calculatorの語源はラテン語のcalc「石」だそうです。人類は昔からモノを数えるために様々な工夫をしていました。

石で数を数えるローマ人 illustration by Akane Hirose

日本で昔から使われているソロバンは、携帯用の計算機として中国の後漢時代に作られたものです。今は、パソコンの生産は中国が世界一ですが、昔から数えることに関わりがあったのですね。

ソロバン photo by Takao Hirose

歯車を使った手廻し式のタイガー計算器が1923(大正12)年に大本寅次郎氏により商品化されました。後にビジコン社が製造した手回し計算機がパソコンの心臓部に使われているワンチップコンピューター8080につながっていきます。

タイガー計算機 photo by Takao Hirose

私が大学のころは、理系の学生は計算尺という文房具を使っていました。ソロバンのように玉をはじいて計算するのではなく、対数目盛の物差しをカーソルに合わせると瞬時に計算結果を読み取れるというアナログ計算機でした。

計算尺 photo by Takao Hirose

スマホは、ピザの注文もできるし、電車に乗ることも、音楽を聞くことも、おしゃべりをすることも、ビデオ会議をすることもできますが、スマホがこのような計算機の仲間だと言われても信じがたいと思います。生き物の系統樹をたどりますとバクテリアまで遡れますが、みんなが便利に使っているスマホのルーツをたどると、間違いなく計算機に行き着くのです。

スマホのルーツをタドッた系統樹 picture by Takao Hirose

■ 戦争の落し子

今使われているコンピューターの開発の発端は、第二次世界大戦までさかのぼることができます。戦争は、悲惨な結果しか残しませんが、皮肉なことに私たちの生活の役に立っている道具には、軍事技術を起源とするものがたくさんあります。計算機もその一つです。

数学者のユダヤ系ドイツ人のフォン・ノイマンは、ナチスの弾圧を逃れてアメリカに亡命しました。そこでマンハッタン計画に加わり中心的な役割りを果たします。爆弾は雨や風の影響を受けるので、正確に目的地に落とためには複雑な微分方程式を解く必要がありました。手計算では限界があり、高性能な計算機が必要でした。そこで、最初のコンピューターと言われているENIACが開発され、ノイマンは基本理論を打ち立てました。

ノイマンが考えた理論は、プログラム内蔵方式とも言われ、あらかじめ記憶装置に組んであるプログラムを順番に実行して動くタイプのものでした。計算機は、手動でしか動きませんでしたが、ノイマンが考えた計算機は人が手を下さなくても自動で計算処理ができました。これ以降プログラムを内蔵して高度な数学的計算ができる計算機のことをコンピュータと呼ぶようになりました。私たちが使っているパソコンやスマホも立派なノイマンの理論で動くコンピューターです。現時点でも、ノイマンのプログラム内蔵方式に代わるコンピューターは実用化されていません。

京都の西陣織の機械をご覧になった方はご存知かと思いますが、西陣織の布を織るために細長い紋紙という厚紙が使われています。その厚紙に空けられた穴の通りに美しい模様が織り上げられて行く仕組みです。紋紙を交換すると違った模様の西陣織が織りあがります。ノイマン式のコンピューターもこれと良く似た原理で動いているのです。

紋紙 illustration by Takao Hirose

■ 何で2進数?

ソロバンもタイガー計算器も10進数が使われていました。実は、最初のコンピューターであるENIACも10進数が使われていました。このように計算に10進数が使われた理由は、子どもが10本の指を折って数えている姿を見ると容易に想像ができます。デジタル(digital)の語源はラテン語で「指」を表すDIGITです。

繰り上がったら桁が上がるというしくみがあれば、コンピューターは何進数でも良かったのですが合理化を突き詰めていくうちに2進数に行きついたのです。デカルトは、方法序説で複雑な問題は細かい部品に分解すると解きやすい、と言いましたが、これ以上分けられない2進数を使うことでシンプルな構造の今のコンピューターができたのです。

2進数は、白か黒かの2つの状態しかありません。今の世の中、2つの意見が出た時、賛成か、反対か、のどちらかにかたよる傾向があります。本来は、ここは賛成だがちょっと違うとか、反対意見の中にも良い点がある、とか、いろいろな選択肢があるのですが・・・。これは、デジタルという考え方の特徴の一つかもしれませんね。

電流が流れている状態を1、切れている状態を0に対応させることで2進数の計算ができます。オンオフのスイッチの機能があれば、それを使ってコンピューターができるということです。

スイッチ photo by Takao Hirose

最初にコンピューターに採用されたのはリレーでした。モーターなどの制御ができるので継電器とも言われています。今でも鉄道や変電所などの電力関係の設備や様々な電気回路に使われています。コイルに電流を流すと電磁石が鉄の接点を引っ張りスイッチを入れるという単純なメカです。しかし、リレーは動作が遅く、接点が錆びて動作不良になることが多く保守にコストがかかりました。

リレー photo by Takao Hirose

次に使われたのが真空管でした。基本的な構造は白熱電球と同じもので、可動部がなく電子的にスイッチの制御ができましたので物理的な故障は減りました。しかし、長い間通電していると熱を持ったり、白熱電球と同じでフィラメントが切れるという欠点がありました。

真空管 photo by Takao Hirose

■ まとめ

石を数えることから始まって人類の英知を集めてついにコンピューターが出来上がりました。その後、しばらくは、大型コンピューターの時代が続くことになります。次回は、メインフレームと呼ばれるまでになった大型コンピューターのお話をします。

▼関連記事はこちらから▼

SHARE: LINE Facebook
URL
URLをコピーしました

記事を作った人たち

タドリスト
廣瀬隆夫
横浜生まれの横浜育ち。シニアITコンサルタント。Macのお絵かきソフトに出会ってデジタルのおもしろさに目覚める。体力は衰えたが好奇心だけは旺盛。レバニラ炒め定食が好物。お酒は好きだが、すぐに顔に出る。