消費行動を通じてサスティナブルな社会作りに挑戦するRetuna”をタドる
読みもの|8.15 Mon

去年8月から今年6月まで10か月間スウェーデンに留学していた大場です。留学生活を送る中で見たことがないことに挑戦しているショッピングモールを発見したのでタドってみたいと思います。

目次

現代の大量生産・大量消費を具現化する“ショッピングモール”

家族、友人、一人でも買い物をするために訪れるショッピングモール。また、在庫を大量仕入れすることで安売りを行うアウトレット施設も観光地化しています。多くの人にとってショッピングモールとは身近な存在ではないのでしょうか。

しかし、その一方でショッピングモールが大量生産・大量消費の根源にもなっています。アメリカの調査では、ショッピングモールの一日当たりのごみの量は1平方フィート(約80平方センチメートル)あたり、約2.5ポンド(約1.134キログラム)です。また、ショッピングモールのお店の中で一番多くの割合を占めている衣服店ですが、日本では年間29億点の衣服が市場に供給されるのに対し、15億点の売れ残りが発生し、それらの多くは廃棄されます。アメリカでも年間一人当たり約80ポンド(約36キログラム)、合計だと1600万トンの繊維廃棄物が発生しています。

既存のショッピングモール概念を覆す”Retuna”

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スウェーデンにはその概念を覆すショッピングモールにはあります。それが世界で初めてのセカンドハンドの商品のみで販売するショッピングモール、Retunaです。Retunaはストックホルムから車で約1時間20分ほどのEskilstuna市に位置する2階建ての複合施設です。

今回は私の体験、感想をもとにサスティナブルな消費とライフスタイルを目指すRetunaをタドリます!

ショッピングモール:”Retuna”

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Retunaとはショッピングモールの名前ですので、もちろんRetuna内に店を出店するテナントがいます。また、そのテナントたちも取り扱うのはリサイクリング、セカンドハンドの商品のみです。その中から今回は4店舗紹介します。

1. IKEA

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まさか、IKEAのセカンドハンド店があるとは想像もしていませんでした。さすがスウェーデン発のIKEA。ここにもスウェーデンらしさを感じることができます(笑)

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販売しているものはセカンドハンドのタンス、椅子、食器、また写真には写っていませんが木材、タオルなど普通のIKEAで買える家庭用品やバックもセカンドハンドとして販売されています。

値段もタンスはおよそ599kr(日本円で約7200円)、椅子も199kr(約2400円)、食器も10kr(約120円)ほどであるため、物価が高いと言われるスウェーデンにおいて比較的安い価格帯です。

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また、このIKEAでは消費者にとってニーズがあるセカンドハンドを紙に書いてこの正方形内に貼り付けます。そして、それを見た店員が書いてあるモノを取り寄せ、販売する取り組みを行っています。

ただ使わなくなったもの、いらなくなったものを売るだけではなく、何が欲しくて、何が重要なのかを消費者との対話を通じ、ニーズに応えるこの販売方法は顧客を増やすことにつながり、よりサスティナブルな販売、経営を可能にする興味深い取り組みだと感じました。

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この言葉、翻訳するとWe believe in a second chance(2回目のチャンスを信じる)になります。この言葉は持続的な世界、経営を目指すRetuna全体の価値観を表現しているのではないでしょうか。

2. Ecoflor

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写真と名前の通り、このお店は花屋です。

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ポットや花の周りを製品はセカンドハンドですが、花はセカンドハンドではなく、生きた花たちです。ではなぜ、Retunaに販売されているのか、それはSustainability Cloneという栽培方法によって花が育てられているからです。Sustainability Cloneとは環境、花に負荷をかけすぎない栽培方法です。水を与えすぎない、環境に毒性がある農薬を使わないなどといった栽培方法を通じて栽培した環境に優しい花、植物をこのお店では販売しています。

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スウェーデンでは家をリノベーションしたり、バルコニーを設置する家庭が多数です。その一部に花、植物を加える中で環境に優しい花、植物の需要があるのではないでしょうか。

3. STOKHOLMS STADSMISSION

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STOKHOLMS STADSMISSIONはセカンドハンド商品の販売から得た利益を通じて子ども、若者、ホームレスに対し社会福祉、教育、仕事の提供の支援を行っている団体です。この団体が経営しているお店はストックホルム内に多くなり、Retunaにあるお店もその一つです。

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販売されている商品は洋服、食器が多くを占めていますが、中には絵画、また本、DVDなども販売されています。また、レトロなファッション、アンティークなモノも販売されているので宝物探し感覚で楽しむことが出来ます。

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STOKHOLMS STADSMISSIONはセカンドハンド販売以外にも、持続可能なファションとデザインを目指す”Remake“、また、人と環境に配慮した食料店”The Food Mission”にも取り組んでいます。

3-4. For you

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このお店では、多くのモノが新しい商品として生まれ変わっています。

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ビンから作られているグラスから定規やチャックを再利用することで作ったネックレス、イヤリングがこのお店には販売されています。

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中には値段が日本円で約2万円のネックレスも発見。これもセカンドハンドの商品です。一見、セカンドハンドの商品なのが信じられないぐらい精巧な作りになっています。ブランドのリンクも貼っておきますので気になる方はぜひ見てみてください。

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SÄGEN : Skandinavisk hållbar smyckesdesign

他にもある面白さが溢れるRetuna

詳しく紹介できなかったRetunaの魅力は他にもあります!

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Retuna内唯一のカフェテリア!お店の中になる椅子、机全てもちろんセカンドハンドらしいです。

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パフェ、ピザなども提供していますが私はパンケーキを食べました。

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置き物のセカンドハンドも発見(笑)

こういうのを買う人はいるのかな?

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おもちゃもセカンドハンドがあります!これは子ども喜びそう!おもちゃがどんどん引き継がれていって、次の世代の子どもがこれらを使って遊ぶのを想像すると微笑ましい気持ちになりました。

他にも環境教育、イベントにも力を入れており、カンファレンスルームの設置、イベント、Retunaの勉強会ツアーも開設されています。私が訪れた12月にはサスティナブルクリスマスマーケットも開かれていたそうです。行きたかったなー。。。

まとめ

いかがだったでしょうか?少しはRetunaに行った気分になっていただけましたか?スウェーデンには「ラーゴム」という価値観があります。この言葉の意味は多すぎず、少なすぎず、ちょうどいいという意味です。Retunaにはセカンドハンドの商品を販売することで大量生産・大量消費とは真逆の必要以上につくらない、捨てない“ちょうどいい”生活を目指す精神を感じました。さらに、価格帯もセカンドハンドの商品のほうが安いため、経済的な負担が少ないという見方もすることが出来ます。

Retunaは2018年から自治体からの補助金なしで運営を可能にさせ、セカンドハンドのみで経営が可能なことを証明しました。経済循環の中で「要らないモノ」を生まないことを目指すRetuna。皆さんの手元にも新しい命、役割が吹き込まれる「要らないモノ」が見つかるかもしれません。ぜひ、周りの「要らないモノ」に目を向けて見てください。

参照

Rachel B, Erika H & Christine C. E (2018). The global environmental injustice of fast fashion. Environmental Health, 17(92), pp. 1-4.

WasteCare Corporation (n.d.). WASTE RECYCLING CONSIDERATIONS AND EQUIPMENT for SHOPPING CENTERS & MALLS

サステナブルスイッチ (2021). 【15億着もの売れ残り】衣服ロス問題と解決策を知ろう

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記事を作った人たち

タドリスト
大場政虎
交換留学生として2021年8月からスウェーデンのSodertorn大学に留学中。環境政策に熱心なスウェーデンで環境経済学を勉強中。スウェーデンでの生活などを通じて気になったトピックを日々発信。