【後編】いとうせいこう発電所 Q&A
読みもの|7.21 Wed

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  現在、大きな話題とともに稼働中の「いとうせいこう発電所」。みんな電力(以下、みんでん)が仕掛けるアーティスト電力として初の事例であり、将来的にはおじいちゃんがお年玉として孫にソーラーパネルをあげるようになる近未来に向けた、大きな一歩でもあります。
 かつてない取り組みに、いくつもの質問が寄せられるのは自然なこと。前後編に分けて展開しているQ&Aの後編には、みんでんから発電所や電源のスペシャリスト・宇野氏も登場。具体的な発電所の在り方についての質問を集めました。
Q:どのような土地に建設された太陽光発電所なのか?環境破壊はされていないか?
いとう:ここ、重要なとこね。今、メガソーラーが自然を壊してるから。
 みんでん:福島県二本松市の耕作放棄地に建設しています。当発電所の建設のために、森林伐採などは行っておりません。
いとう:「耕作放棄地の再利用」という意味でも、リカバリーなんだよね。
Q:太陽光発電所はソーラーシェアリングか?

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福島県は二本松市で絶賛発電中の、いとうせいこう発電所

いとう:最初そうかと思ってたんだけど、いろいろな理由で、どうやら違うみたい(笑)。
 みんでん:現時点では、野立ての太陽光発電所です。ゆくゆくはパネルの下で農作物や植物を栽培し、ソーラーシェアリング型にしていく予定です。
いとう:これは農地を使うことになるから法的にも制約があって、でもクリアしていきたい。作物を配れるようになったら、「いとうせいこう発電所」の価値が倍増するから。
Q:太陽光発電所の強度は?台風や降雪で壊れる懸念はないか?

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せいこうさんは2019年から、発電所の視察や勉強を続けられています。その時の記事はコチラ

いとう:せっかく電力を作るのに脆弱だと困る。そのへんどうなのかってことですね。
 みんでん:日本産業規格であるJIS C8955規格に基づいて設計しており、架台の太さや高さも要求基準以上のものを採用しています。
いとう:もちろん日々柔軟に強靭にしていきましょう。
Q:太陽光パネルの製品寿命後、廃棄はどのように考えているか?
いとう:これは僕自身よく聞かれるし、自分でもしっかり勉強していきたい大事な部分なんだよね。
 みんでん(宇野):リユース・リサイクル・アップサイクルも視野に入れ、適切に対応していきたいと考えています。
 太陽光パネルは適切にメンテナンスをすれば30年、長ければ40年以上使い続けることができます。
 また、寿命を迎えた太陽光パネルについてはリサイクルをしていきますが、実はパネルは重量にして8割近くがガラスでできていて、残りはアルミフレーム、発電部分のシリコンなどです。

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出典:NEDO「太陽光発電開発戦略 2020」

ガラスと金属部分を分類してリサイクルする技術は確立されつつあり、現状の技術で太陽光パネルは8割以上がリサイクル可能です。

リサイクルの例

出典:環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」

 発電をしているシリコンの部分は、材料が元々どこにでもある安価な材料ということもあり、現在は埋め立ててしまうことが多いです。でも、こちらもリサイクルをして、100%リサイクルを目指していきます。
いとう:この「埋めるしかないもの」のパーセンテージを、どう削っていくか。そこが原子力発電所の放射性廃棄物より、どう「マシ」か。現実を厳しく見る上で、この数字はずっと見すえていきたいと思います。
Q:いとうせいこうさんが発電所の所有者か?

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この時みんでんと一緒に訪れたのは、千葉県は匝瑳市でソーラーシェアリング発電所を運営されている市民エネルギーちばの皆さん

いとう:自分でいきなり発電所を持つにはけっこうな金額が必要で、所有の仕方はみんでんと協議して決めました。「アーティスト電力(のち「電力シェアランド」)」をたくさんの多様なアーティストと共に実現するためには、きっかけが簡単で負担が小さいほうがいいので。
 みんでん:ということで、発電所の所有権はみんな電力にあります。今回せいこうさんには、ネーミングライツの名義貸しというかたちで、関わっていただいています。
いとう:これなら、あらゆるアーティストが心配なく参入できるはず!
Q:「アーティストがつくった電気が届く」とは、技術的にどういうことなのか?

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2019年は千葉を大きな台風が襲い、甚大な被害が出た年。発電所から直接電気を引ける仕組みがあれば、それは地域の助けにもなる

いとう:これもさ、もちろん僕なりに理解はしています。でも、専門的な知識がないと、言葉の使い方ひとつで間違った情報が伝わっちゃう部分だから、しっかり勉強したいと思っています。
 みんでん(宇野):まず大前提として、いとうせいこう発電所でつくった電気が、物理的に専用の電線を通って届いているわけではありません。
 電気を安定して利用するためには、「つくる電気」と「使う電気」の量が常に同じである必要があります。これを「同時同量」といいます。みんでんのような新電力は30分単位で発電量と需要量を把握していて、私たちは「確かにこの時間に発電した電気を、確かにこの時間に使った電気とマッチング」してブロックチェーンに記録しています。
 ブロックチェーンは改ざん困難な分散型台帳なので、これらの電力取引を「証明」できたとし、「せいこう発電所から電気を購入している」としています。
いとう:銀行口座の向こうから、自分の預金をおろしてるイメージですよね。
 それは確かに僕の一万円なんだけど、一万円札はそれぞれ違うというか、だから、発電した分がみんでんの大きなプールに入り、需要側がそのプールからダウンロードするというか。
 なので、「(見かけ上)いとうせいこう発電所」から使っていることになる、という。
Q:P2P電力トラッキングシステムで、今後どのようなことが実現できるのか?

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いとう:細かく追えるということは、あちこちの発電所を選んで「MY電源構成」をつくれるってことだよね。発電所の状態を刻々と見れるし、それを自在に選びながら電気を使える。
 ここに不自由がないように制度が新しくなっていくことが理想だし、技術的にはみんでんならそれができるんだよね。

 

未来の先駆けである「アーティスト電力」と、その最初の具体例「いとうせいこう発電所」。浮かんでくる疑問の解消に、
本記事は役立てたでしょうか。今後もどんどん「わかりやすさ」を改善していきますので、よろしくお願いいたします

 

(構成:ENECT編集部)
2021.7.1 thu.
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