老舗酒蔵の再生可能エネルギー切り替え潮流に注目!その決断の裏にあるものとは?
読みもの|9.24 Fri

10月1日は「日本酒の日」

酒造年度が10月から翌年の9月までと制定されたのは明治29年(1896)。つまり10月1日は酒蔵にとっての元旦だった。また、10月は干支の10番目の「酉」にあたる月。トリという字は元来壺の形を表す象形文字で、酒の意味なのだそう。新米が収穫されて酒造りが始まる10月1日を「日本酒の日」※1に制定したのも至極納得がいく。現在、酒造年度は7月から6月までに改訂※2されているが、今でも10月1日に「酒造元旦」の祝いの儀式を行う酒蔵もあるという。

神奈川県の井上酒造 photo by SANJU production

10月1日の「日本酒の日」にちなんで、9月25日から10月3日まで日本酒造組合中央会が主催する「日本酒で乾杯WEEK」が開催され、全国各地でオンラインイベントやキャンペーンが企画されている。お気に入りの一本を用意して参加してみてはいかが?

日本酒造組合中央会HPより

老舗蔵元が再生可能エネルギーに切り替える理由

日本酒の日の10月1日、長野県上田市の岡崎酒造さんが「みんな電力」の再生可能エネルギーによる電力に切り替えることになり、石川県の吉田酒造店、神奈川県の井上酒造、千葉県の寺田本家、福島県の仁井田本家とあわせて酒造の契約が5社になった。5社ともに江戸時代創業の歴史ある酒蔵。中には 再生可能エネルギー への切り替えで電気料金が上がってしまう酒蔵もある。にもかかわらず、 再生可能エネルギー への切り替えを“今やらなければいけない選択”として決断するのは、なぜだろうか。

photo by 吉田酒造店

言うまでもなく日本酒は米と水と発酵によってつくられる繊細な酒。つくり手は常に温度や気候の変化を敏感に感じている。酒造メーカーならではの肌で感じる環境変化への危機感がその決断へと導いていると言ってもいいだろう。前述の5社のひとつ、再生可能エネルギーを選択した石川県の吉田酒造店七代目・吉田泰之さんは、日本酒のことを「自然エネルギーのバトンパスでできた液体」と語り、地元の降雪量の急激な減少、空調管理や冷蔵庫の増設でものすごい量の電気を使っている現状に「この酒づくり、10年後20年後に続けられるのか?」と大きな危機感を覚えたそうだ。先祖から受け継いだものを次の世代へ繋ぐ責任、自然環境との密接な関係、そして日本酒はその地域を代表する味でありブランドであること。常に一歩先を見越して行動してきたからこそ何代も続いてきた地域のトップランナーの決断は、未来への指標として重要な意味を持つ。

photo by 吉田酒造店

日本酒を世界文化遺産へ

そもそも我々は日本酒という自分たちの素晴らしい文化に気づいていないのではないか。世界の発酵法の中でもっとも高度な技術とされる麴菌による並行複発酵(糖化とアルコール発酵が同時に進行する発酵技術)という日本酒固有の醸造法でつくられた新酒に、火入れ(低温殺菌)して貯蔵タンクに囲い、熟成させ、芳醇な酒となる日本酒。近代細菌学者の祖と言われるパスツールよりも300年も先んじて低温殺菌法を用いている日本人の知恵。当の日本より欧米諸国に日本酒の評価が高いのは、味ばかりでなく文化へのリスペクトが大きいのではないかと思う。

2021年初頭、政府は日本酒や焼酎をユネスコの無形文化遺産の2024年の登録に向けて提案する方向で調査・検討を進めていると発表。各地老舗酒蔵のSDGsな取り組みも、評価の一端を担うに違いない。

photo by 吉田酒造店

みんな電力と契約している酒造一覧

石川県 吉田酒造店

千葉県 寺田本家

福島県 仁井田本家

長野県 岡崎酒造

神奈川県 井上酒造

井上酒造には、 ソーラーシェアリングの田んぼのお米を使った特別なお酒 「推譲」 も。
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photo by SANJU production

※1  1978年に日本酒造組合中央会が制定

※2  製造実態に則し原料米の割り当てを目的に1965年度から改定。その意味では現在の酒蔵の元旦は7月1日になる。

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記事を作った人たち

タドリスト
古谷尚子
神奈川県出身、鎌倉在住。某出版社に33年、編集者としてカリスマ美容家IKKOさんの書籍をベストセラーに。カラスミから器まで、なんでも自分で作ってみたい症候群。